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Transistor Circuits:カレントミラー回路の基本2

LSI、半導体回路、集積回路において、現在では、Bi-CMOSプロセスが中心となり、デジタル、アナログ回路が混在した半導体製品や、IC、集積回路が主流になってきていますが、やはり、バイポーラトランジスタ回路を使った高精度アナログ回路など、NPN、PNPトランジスタを使ったバイポーラ回路は、とても重要です。そのため、ここでは、トランジスタ回路の、設計について、基本的な事柄を勉強していきたいと思います。

今回は、カレントミラー回路をもう少し詳しくみていきたいと思います。










Contents:解説1、 カレントミラー回路の注意点

今回は、カレントミラー回路を使う上での注意点について、考えてみたいと思います。使用する上で、気をつけなければいけないのが、様々な誤差要因です。


Fig.1 基本カレントミラー回路


Fig.1に最も基本的なカレントミラー回路を示します。前のページで、上記Fig.1の回路の場合、 右と左のそれぞれのトランジスタが同じサイズで ペアが取れている場合、Iref=Ioutになるとお話しましたが、 実際に使う場合は必ずしもそうなるとは限りません。Iref=Ioutになるのは以下の条件のときです。

1、ベース電流を無視したとき
2、アーリー電圧が∞のとき

以上の2点を満たす場合、Iref=Ioutになり得ます。実際はベース電流が流れたり、有限のアーリー電圧が存在するため、 Iref=Ioutにはならず、入力電流と出力電流の間には誤差が存在します。この誤差について考えてみましょう。




Contents:解説2、 カレントミラー回路、ベース電流の影響

では、次に、ベース電流の影響について考えてみたいと思います。


Fig.2 基本カレントミラー回路


Fig.2の回路で、入出力電流を計算してみます。左のトランジスタをQ1、右のトランジスタをQ2とおくと IrefはQ1のコレクタ電流とQ1、Q2のベース電流になるので、


Iref=Ic1+Ib1+Ib2 ・・・①
次に、Q1とQ2は同じサイズのトランジスタと仮定すると、

Ic1=Ib1×hfe ⇒ Ib1=Ic1/hfe
Ic2=Ib2×hfe ⇒ Ib2=Ic2/hfe

Q1、Q2は同じVbeで動作するとすると、

Ib1=Ib2=Ic1/hfe ・・・②
になります。

②を①に代入すると

Iref=Ic1+Ic1/hfe+Ic1/hfe
Iref=Ic1+2Ic1/hfe
Iref=Ic1(1+2/hfe) ・・・③となります。

ここでQ1、Q2は同じVbeで動作するとすると、
Ic1=Ic2=Ioutとなり、
Iref=Iout(1+2/hfe)となります。

つまり、Iout=Iref/(1+2/hfe)

例えばI1=100uA、hfe=120とおくと
Iout=100uA/(1+2/120)=98.4uAとなり、
出力電流はIref=Ioutではなく誤差が発生します。

この誤差が大きいか、小さいかは、
設計する回路や、目標仕様によりますが、
注意が必要です。








Contents:解説3、カレントミラー回路、アーリー電圧による影響

では次に、アーリー電圧の影響について考えてみたいと思います。



Fig.3 基本カレントミラー回路


アーリー電圧を考慮したコレクタ電流の式は

Ic=Is・exp(Vbe/VT))×(1+Vce/VA)です。

この式を使ってFig.3の回路の関係を考えると

Ic1=Is・exp(Vbe/VT))×(1+Vce1/VA)
Ic2=Is・exp(Vbe/VT))×(1+Vce2/VA)

ここでIc1とIc2の比をとると、

Ic2/Ic1=(1+Vce2/VA)÷(1+Vce1/VA)
となります。

例えば、VA=100、Vce1=0.7V、Vce2=5Vとすると、

Ic2/Ic1=(1+5/100)÷(1+0.7/100)=1.043

ここでIref=100uAとするとIoutは104.3uAになります。
(もちろんVA=∞ならIref=Iout=100uAです。)

以上より有限のアーリー電圧が有限の場合(通常)、
出力電流はIref=Ioutではなく誤差が発生します。

上記から分かるように、通常、カレントミラー回路を回路の中で使用する場合、カレントミラーの右と左の回路のコレクタ・エミッタ間電圧は、異なることが多いため、アーリー電圧の影響を受けやすくなります。この電圧が揃えば、誤差は小さくできます。





Contents:今回のポイント

以上、ここでは、カレントミラー回路の誤差について考えましたが、もう一度まとめると、

1、ベース電流により、出力電流は減少する方向。
2、アーリー電圧により、出力電流は増加する方向。

その他、Q1とQ2のVbeにばらつきやレイアウト的なミスマッチが あればもちろん出力電流に誤差が発生します。上記Fig.1のようなカレントミラー回路は、シンプルで簡単ですが、 その分、誤差が発生することを覚えておいてください。

カレントミラー回路の動作や計算についても、以下の書籍が詳しいです。
システムLSIのためのアナログ集積回路設計技術〈上〉

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