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Transistor Circuits:エミッタ接地回路の基本8

LSI、半導体回路、集積回路において、現在では、Bi-CMOSプロセスが中心となり、デジタル、アナログ回路が混在した半導体製品や、IC、集積回路が主流になってきていますが、やはり、バイポーラトランジスタ回路を使った高精度アナログ回路など、NPN、PNPトランジスタを使ったバイポーラ回路は、とても重要です。そのため、ここでは、トランジスタ回路の、設計について、基本的な事柄を勉強していきたいと思います。

今回は、トランジスタの反転スイッチについて、基本的な内容をまとめていきます。










Contents:解説1、 トランジスタの反転スイッチについて

今回は、エミッタ接地回路で、反転スイッチ用途について考えていきます。



(a)エミッタ接地回路             

エミッタ接地のDCスイープ特性

(b)入出力電圧特性            
Fig.1 エミッタ接地回路基本特性


上記回路は、前のページでも扱っている回路です。ここで、VINをリニアに入力するのではなく、0Vと電源電圧の2つの電圧を入力した場合を考えます。上記(b)より以下の結果になります。

VIN VOUT
0v 電源電圧
電源電圧 Vce(sat)≒0

この結果だけを考えると、VINに入ってくる信号で、出力電圧は、上記2値をとります。
ロジック回路で考えると、出力電圧としては「有る」or「無い」と考えることが出来るので、「1」or「0」つまり、「H」or「L」と考えることが出来ます。
これを踏まえると、以下の結果になります。

VIN VOUT
L H
H L

以上の結果より、エミッタ接地回路をオフ領域、もしくは、飽和領域で用いると、ロジックのインバータ回路として使えることがわかりました。




Contents:解説2、 トランジスタの反転スイッチについて

次にシミュレーションを使って、簡単な特性をみていきます。
勉強のため、エミッタ接地回路の負荷抵抗を2種類に変えてみてみます。
抵抗の違いによる出力電圧特性の違いは、あるのでしょうか?

1)R1=100Ωの場合          

負荷抵抗が小さい時のエミッタ接地回路
(a)エミッタ接地回路
負荷抵抗が小さい時の出力切り替わり特性
(b)シミュレーション結果
Fig.2 負荷抵抗が小さい場合


上記Fig.2のR2は、ベース電流を制限するために入れている抵抗です。上記結果より分かることは、Fig.2の場合、負荷抵抗が、100Ωと小さいため、Vin=4.8V付近でもトランジスタが完全に飽和していません。これでは、出力電圧を考えた時に、どこまでがHで、どこでがLかが、はっきりしません。


例えば、VCC=5vで、Vin=5Vの場合、Q1のベース電流は、

Ib=(Vin - Vf)/R2なので、
Ib=(5v-0.7v)/10kΩ=430uA   
(Q1がオンするVf=0.7vと仮定)

また、Q1が流せるコレクタ電流のmax値は、
Q1のVce=0とすると、

Ic=(VCC-Vce)/R1 Ic=5v/100Ω=50mA

以上より、Q1の最大コレクタ電流値の場合、

β=Ic/Ib=50mA/430uA=116.3倍となり、
この抵抗値では、βがまだまだ高い領域にある状態となります。
つまり、βが高く、増幅できる状態です。

これは、スイッチとしては、よくない状態です。








Contents:解説3、 トランジスタの反転スイッチ確認

2)R1=10kΩの場合

負荷抵抗が大きい時のエミッタ接地回路

(a)エミッタ接地回路

負荷抵抗が大きい時の出力切り替わり特性

(b)シミュレーション結果
Fig.3 負荷抵抗がある程度大きい場合


上記Fig.3のR2は、ベース電流を制限するために入れている抵抗です。Fig.3の場合、Vbe=0.8V程度で飽和しているので、切り替わり電圧付近以外は、Hか、Lかが、はっきり分かれています。

この場合、例えば、VCC=5vで、Vin=5Vの場合、
Q1のベース電流は、

Ib=(Vin - Vf)/R2なので、
Ib=(5v-0.7v)/10kΩ=430uA   
(Q1がオンするVf=0.7vと仮定)

また、Q1が流せるコレクタ電流のmax値は、

Q1のVce=0とすると、
Ic=(VCC-Vce)/R1 Ic=5v/10kΩ=500uA

以上より、Q1の最大コレクタ電流値の場合、
β=Ic/Ib=500uA/430uA=1.16倍となり、
この抵抗値では、βが十分低い状態になっており、
Q1が十分飽和している状態と考えられます。
これは、スイッチとして使える状態です。


以上より、スイッチ回路を用いる場合は、負荷がある程度大きな値でなければ、トランジスタを十分飽和させることができず、きちんとH、Lが出せなくなるので、注意が必要です。これは、負荷抵抗でコレクタ電流が決定され、それにより、βも変化するためです。実際使用するトランジスタの特性にもよりますが、トランジスタを飽和させるためには、通常βを最低10もしくは5以下に設定すればよいと考えます。
(2以下など、十分小さくても問題ありませんが、消費電流等は考慮が必要です)




Contents:今回のポイント

以上、ここでは、エミッタ接地回路を反転スイッチとして使う方法を考えましたが、一番重要なことは、トランジスタがオンしたときに、必ず飽和している状態にするということです。この回路は、よく用いられる回路ですので、イメージをつかんでおいてください。


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