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Transistor Circuits:エミッタ接地回路の基本9

LSI、半導体回路、集積回路において、現在では、Bi-CMOSプロセスが中心となり、デジタル、アナログ回路が混在した半導体製品や、IC、集積回路が主流になってきていますが、やはり、バイポーラトランジスタ回路を使った高精度アナログ回路など、NPN、PNPトランジスタを使ったバイポーラ回路は、とても重要です。そのため、ここでは、トランジスタ回路の、設計について、基本的な事柄を勉強していきたいと思います。

今回は、トランジスタ回路の各種パラメータ、等価回路など、基本的な内容をまとめていきます。










Contents:解説1、 トランジスタ回路の計算式について

今回は、トランジスタ回路を計算する上での基本的な式を考えます。



Fig.1 エミッタ接地回路

バイポーラトランジスタは、ベース・エミッタ間電圧により、エミッタ電流(コレクタ電流)を 制御する素子です。解析に必要な式は、エミッタ電流(コレクタ電流)の式を使って、 変化する各パラメータを計算することが出来ます。


一般的な計算用パラメータをまとめると以下の表のようになります。

変化するパラメータ

計算用パラメータ

Vbeの変化に対するコレクタ電流の変化

gm

Vbeの変化に対するエミッタ電流の変化

re

Vbeの変化に対するベース電流の変化

rπ(パイ)

Vceの変化に対するコレクタ電流の変化

ro



<よく使う基本的な関係式>
・Ib+Ic=Ie
・Ib×β=Ic
・Ie=Is・exp(Vbe/VT)
・Vbe=Vt・ln(I/nIs)
・VT≒26mV(25.6mV)

それでは、上記パラーメータを順に計算していきましょう。


(1)gmについて
基本的な定義は、次の様になります。
⇒Vbeの変化に対するコレクタ電流の変化。   

gm=ΔIc/ΔVbe

簡単のため、ベース電流を無視し、Ic=Ieとおくと、

Ic=Is・exp(Vbe/VT)  
 
gm=ΔIc/ΔVbe
    
=ΔIs・exp (Vbe/VT)/ΔVbe
    
=(1/VT)・Is・exp(Vbe/VT)
    
=Ic/VT

となります。


(2)reについて
基本的な定義は、次の様になります。
⇒Vbeの変化に対するエミッタ電流の変化。

re=ΔVbe/ΔIe Ie=Is・exp(Vbe/VT)より、

re=ΔVbe/ΔIs・exp(Vbe/VT)    

1/re=ΔIs・exp(Vbe/VT)/ΔVbe

=(1/VT)・Is・exp(Vbe/VT)

=Ie/VT    

re=VT/Ie

となります。




Contents:解説2、 トランジスタの回路の計算式について2

(3)rπについて
基本的な定義は、次の様になります。
⇒Vbeの変化に対するベース電流の変化。

rπ=ΔVbe/ΔIb

Ib=Ic/β=Is・exp(Vbe/VT)/β    

ΔIb/ΔVbe=Δ(Is・exp(Vbe/VT)/β)/ΔVbe

=(Is・exp(Vbe/VT)/β)/VT    

rπ=ΔVbe/ΔIb

=VT/Ib=VTβ/Ic=β/gm と

なります。


(4)roについて
基本的な定義は、次の様になります。
⇒Vceの変化に対するコレクタ電流の変化。

ro=ΔVce/ΔIc    

ro=(VA+Vce)/Ic


以上をまとめると、以下のようになります。

<計算用パラメータ式>

計算用パラメータ

gm

gm=Ic/VT

re

re=VT/Ie

rπ=β/gm≒βre

ro

ro=(VA+Vce)/Ic



上記で、もし計算間違いなどございましたら、
お知らせください。









Contents:解説3、 トランジスタの等価回路について

次に、トランジスタ回路の等価回路について、一般的な内容をまとめてみます。

バイポーラトランジスタ回路で、AC的な動作を解析する時に便利なのが、トランジスタの等価回路です。等価回路とは、トランジスタの諸特性を電流源や、インピーダンス等に置き換えて出来たモデル回路です。利用方法としては、各種接点方程式を立て、計算を行うことができます。この等価回路を使用することにより、入力インピーダンス、出力インピーダンス、 入出力ゲイン、カットオフ周波数等、さまざまな計算が行えます。これは、アナログ回路設計者の強力な武器となります。

エミッタ接地回路の例を考えてみます。


(a) 回路図               


(b)等価回路
Fig.2 エミッタ接地回路の例


まず、それぞれのパーツの説明からはじめます。

パラメータ

説明

トランジスタの入力抵抗です。このにかかる電圧V1は、トランジスタそのもののベース・エミッタ間に掛かる電圧と考えると理解しやすいです。rπ=β/gmとなります。

gm・v1

gmの定義はΔIc/ΔVbeです。つまりこれは、コレクタ電流の微少電流変化電流源になります。

ro

トランジスタの出力インピーダンスです。
通常(VA+Vce)/Iで表現されます。

Z

Zは、トランジスタのコレクタ側に付く負荷を意味します。
抵抗や定電流等に相当します。


上記表の説明と、等価回路からそれぞれの特性を考えると以下の様になります。

項目

説明

入力
インピーダンス

入力インピーダンスは、トランジスタのベースから対GND間につながる抵抗なので、そのものです。

出力
インピーダンス

出力インピーダンスは、入力電圧を0にした状態で出力端子からGNDにつながる抵抗です。Zと電源端子はAC的には電位が変動しないのでAC的GNDとみなせます。
以上より、
Z//roとなります。

入出力
ゲイン

入出力ゲインは、入力電圧VINに対するVOUTの変換率です。VINの変化⇒Vbeの変化⇒Ie及びIcの変化となり、gm・V1はコレクタ電流の微少電流変化ですので、この微少電流変化がコレクタにつながる負荷抵抗で電圧変換されたものがVOUTになります。以上より入力から出力への微少変化は、

VOUT= - gm・V1・(Z//ro)
となり、V1=VINなので、最終的に、

VOUT/VIN=-gm・(Z//ro)
となります。






Contents:今回のポイント

以上、ここでは、エミッタ接地回路を例にとり、 各種パラメータ、等価回路についてまとめましたが、 これは今後、非常に重要な内容ですので、しっかり勉強したいところです。

等価回路や、計算方法等については、
システムLSIのためのアナログ集積回路設計技術〈上〉 
などが非常に詳しく書かれており、勉強になります。


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