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Transistor Circuits:エミッタ接地回路の基本7

LSI、半導体回路、集積回路において、現在では、Bi-CMOSプロセスが中心となり、デジタル、アナログ回路が混在した半導体製品や、IC、集積回路が主流になってきていますが、やはり、バイポーラトランジスタ回路を使った高精度アナログ回路など、NPN、PNPトランジスタを使ったバイポーラ回路は、とても重要です。そのため、ここでは、トランジスタ回路の、設計について、基本的な事柄を勉強していきたいと思います。

今回は、トランジスタの飽和(saturation)について、基本的な内容をまとめていきます。










Contents:解説1、 トランジスタの飽和(sat)について

今回は、トランジスタの飽和について考えていきます。




(a)エミッタ接地回路

エミッタ接地のDCスイープ特性

(b)入出力電圧特性
Fig.1 エミッタ接地回路基本特性


飽和とは、言葉の通りある量が増加し、それ以上増えない状態です。英語で、saturationと言います。

例えば、上記Fig.1(b)の特性の右側の飽和領域では、出力はほぼ一定の値Vce(sat)になっており、入力電圧を上げていっても、出力電圧は、ほとんど変化していません。これがトランジスタが飽和している状態です。

では次にトランジスタが飽和しているとき、どういう状態になるかを考えてみます。

関係 主な特徴
各端子電圧の関係 コレクタ電圧<ベース電圧
電流の関係 ベース電流はsub(サブ)基板に漏れる。
Ic=βIbは成り立たたない。        (LSIなどp基板上に素子が形成されている場合)





Contents:解説2、 飽和状態について

では、次に、上記特徴について、もう少し詳しくみていきます。


基本Vce-Ic特性

Fig.2 Vce-Ic特性(エミッタ接地で測定)


Fig.2にトランジスタのVce-Ic特性を示します。ただし、Vbe電圧のそれぞれは、0.6V以上にバイアスしています。ここで、
赤○のところが飽和領域です。

例えば、A点の電位を考えてみましょう。
A点のVce電圧は約0.2V程度しかありません。他の飽和領域内におけるポイントも同様です。どのポイントも約0.3V以下になっています。つまり、飽和している状態では、コレクタ電位<ベース電位になっています。


次にこの状態になったときに、何が起こるかを考えてみます。

一般的なNPNトランジスタの縦構造

Fig.3 一般的なP基板上に素子を形成した場合の
NPNトランジスタの縦構造と飽和時の振る舞い


例えばトランジスタが飽和しており各端子の電圧が以下の場合、 各電位は、以下のようになります。


ベース端子 ⇒ 1V コレクタ端子 ⇒ 0.2V エミッタ端子 ⇒ 0V


この場合、上記Fig.3から分かるように、意図しない寄生PNP素子があり、今回の電位関係では、このPNPがオンしてしまいます。一般的に半導体回路ではPN接合に対し、PとNの電圧の与え方で、 電流を流す、流さないを決め、素子を分離・構成しているので、 各ポイントにおける、それぞれ決定した電位関係を守られなければ、 意図せぬ寄生素子が出来てしまい、誤動作する場合があります。


上記の場合、通常の順方向活性領域で使用している場合は、 コレクタ端子>ベース端子となりこの寄生PNP素子はON出来ませんが、 飽和領域で使用すると上記のような寄生素子がONしてしまい、 ベースに電流を供給しても寄生PNP素子により、一部の電流がsubに流れてしまいます。








Contents:解説3、 飽和状態2

では、この状態になった場合、どうなるかを考えてみます。

ベース電流を供給してもその一部がsubに流れるとどうなるのでしょうか?



答えは、Ic=βIb(Ic=hFE×Ib)が成り立たなくなるということです。通常、ベース電流に対し、β(hFE)倍された電流が、コレクタに流れますが、 飽和状態では、コレクタ電流に変換されず、subに流れる電流が多くなります。つまり、β(hFE)が見かけ上、下がる傾向になるということです。βが下がると、どうなるかというと、増幅器として有効でないということです。増幅器で用いる場合の禁止事項として、飽和領域で使用しないことがありましたが、 このような理由からそうなります。





Contents:今回のポイント

以上、ここでは、トランジスタの飽和(sat)について考えてみました。今回は、LSIの素子縦構造を用いましたが、このように、LSI回路設計では、 縦構造を考える機会も多いので、少しずつ慣れていくことが必要です。また、回路のいろいろな場面で、トランジスタの飽和(sat)は、使っていくので、どのような現象かのイメージができると、いろいろ理解しやすくなります。

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