次に、エミッタ電流について考えてみます。ある回路を設計するときに、エミッタ電流、コレクタ電流をいくらに設定すればよいでしょうか? エミッタ電流の設定方法は、色々なパターンが存在します。いくつか書いてみると、
●回路全体の回路電流が仕様で決定されてときは、それに合わせた電流値で設計する。
⇒ただし、その場合、その電流値で特性が取れる素子選定が必要。
●素子のリーク電流より十分大きな値で設計する。
⇒過電圧印加時、高温時など、素子のリーク電流がある場合は、その影響を受けるため、素子リークより十分大きな電流値に設定し、その影響を少なくすることが重要です。
●そのプロセス、素子に応じて、hFEのばらつきが平らなところに設定する。
⇒ばらつきの影響を減らすため。
●そのプロセス、素子に応じて、hFEが十分高くとれる電流値にする。
⇒その素子の能力を活かすため。
●そのプロセス、素子に応じて、トランジスタの周波数特性が最大となる電流にする。
⇒その素子の能力を活かすため。
などです。これ以外にもあるかもしれませんが、重要なことは、使用するプロセス、素子の特性から、今設計しようとしている回路で、何が重要か?何を要求仕様とされているのかを考えて、値を決定していくとよいでしょう。
次に考えてみたいのは、以下のパラメーターです。
パラメータ | 特徴など |
hFE | トランジスタは、エミッタ電流、コレクタ電流が微少電流領域および、大電流領域では、一般的にhFEが下がる傾向があるため、使用する素子のhFEとエミッタ電流や、コレクタ電流の関係データを確認し、hFEが十分高くなる電流値を設定することが重要です。もちろん電流がばらついても、hFEが大きく変化しない電流値に設定することも重要です。 なぜなら、例えば、コンパレータ回路など、差動対回路の入力電流は、PNPトランジスタなどのベースにつながることが多く、ここから流出するベース電流は、hFEで電流が決まるからです。結果、このベース電流のばらつきの要因になります。また、回路によっては、hFE特性により、ゲインや、増幅率などが変化する場合のあるため、素子ばらつきや、温度特性の影響を受けにくいポイントに選定することが重要です。(一番よいのは、これらのパラメータに左右されない回路設計です。) |
fT | トランジスタのエミッタ電流と、使用できる限界周波数fT(カットオフ周波数特性)との関係は、微少電流領域や大電流領域では一般的にfTが下がってくる傾向があるため、周波数特性を伸ばしたい用途で回路を設計する場合は、この電流値の選定も重要です。使用したい素子の、エミッタ電流や、コレクタ電流とfTの関係のデータも確認することが重要です。 素子の周波数特性で制限されてしまえば、回路でいくら工夫をしても、周波数特性を伸ばすことは、難しいからです。 |
以上、ここでは、トランジスタ回路を用いる上での重要な電流と、関係するパラメータについて考えましたが、やはり重要なのは、求められている要求仕様に対して、使用する素子選定、また使用する電流値を決定していくことが重要です。
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