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Transistor Circuits:エミッタ接地回路の基本4

LSI、半導体回路、集積回路において、現在では、Bi-CMOSプロセスが中心となり、デジタル、アナログ回路が混在した半導体製品や、IC、集積回路が主流になってきていますが、やはり、バイポーラトランジスタ回路を使った高精度アナログ回路など、NPN、PNPトランジスタを使ったバイポーラ回路は、とても重要です。そのため、ここでは、トランジスタ回路の、設計について、基本的な事柄を勉強していきたいと思います。

今回は、エミッタ接地回路のバイアスについて、基本的な内容をまとめていきます。










Contents:解説1、 エミッタ接地回路のバイアスについて

エミッタ接地回路のバイアスについて考えてみます。

回路にバイアスするとは、回路を動作する状態にすることです。各素子がオフするのではなく、オンし、動作している状態にすることです。エミッタ接地回路の場合は、設定したいエミッタ電流になるように、トランジスタのVbe電圧を設定することです。また、出力電圧を電源電圧の1/2になるように、トランジスタを動作させることです。この設定されたバイアス電圧を基準にトランジスタは、AC動作を行うので、バイアスポイントを間違えると、出力波形の上が、下かがクランプしてしまったりするなど、 最大振幅が取れなくなるため、注意が必要です。では、次の例題で確認してみましょう。

基本エミッタ接地回路

a)エミッタ接地回路               

DCスイープ特性

(b)入出力電圧特性              
Fig.1 エミッタ接地回路基本特性

上記回路を、前のページで説明した手順に従って考えてみます。Vout電圧が、電源電圧の1/2になる入力電圧は、0.563Vでした。この電圧をVINのバイアス電圧にし、振幅5mVのSin波を入力してみます。

適切なバイアス設計時の入出力波形
Fig.2 Voutが電源電圧の1/2程度になるようにバイアスを与えたときの特性

Fig.2に結果を示します。


Vinが10mV振れているのに対し、Voutは、約80mVとなっており、 約8倍に増幅されています。これは、想定どおりの結果です。


次に、勉強のため、わざとバイアス電圧をずらして入力してみます。Vout電圧が、約0.5V付近になる入力バイアス電圧を入れてみます。その電圧は、VIN=0.7Vです。この電圧をVINのバイアス電圧にし、振幅5mVのSin波を入力してみます。
      
適切でないバイアス時の入出力特性

Fig.3 Voutが約0.5Vになるようにバイアスを与えたときの特性


Fig.3に結果を示します。Vinが10mV振れているのに対し、Voutは、約1.4mVとなっており、 増幅どころか、減衰してしまっています。これも、想定どおりの結果です。


以上の結果より、DCバイアス電圧を間違えると、せっかくの増幅器が、 増幅器でなくなってしまうため、注意が必要です。適切な電圧になるようバイアス設計は、非常に重要です。








Contents:解説2、 エミッタ接地回路のバイアス例

次に考えてみたいのは、どのようにしてバイアスするかです。実際のトランジスタ回路のバイアス方法について考えてみます。最も簡単なバイアス回路は、抵抗分割です。次の回路を例にとって、バイアス電圧や、電流の決定方法を考えてみます。

電源電圧=5V、Z1=Z2=10kΩ、Z3=25kΩ、Z4=18kΩ

バイアス回路設計用基本回路

Fig.4 エミッタ接地回路のバイアス例


上記Fig.4の回路を考えます。ここでは、簡単のため、トランジスタのベース・エミッタ間電圧を 0.7Vに近似して考えます。DC特性を計算する場合、このように、 ベース・エミッタ間電圧を0.6〜0.7Vに近似すると計算しやすいです。


1、抵抗分割によるトランジスタのバイアス電位の計算
上記回路より、Z1とZ2の抵抗分割なので、

VIN=電源電圧×Z2/(Z1+Z2)=5v÷10kΩ/(10kΩ+10kΩ)=2.5V

2、エミッタ電流(≒コレクタ電流)の計算
エミッタ電圧は、VINからトランジスタのベース・エミッタ間電圧が、
下がった電圧なので、

Ve=VIN-Vbe=2.5V-0.7V=1.8V

以上より、エミッタ電流は、Ve/Z4=1.8V/18kΩ=100uA

3、出力電圧の計算
出力電圧VOUTは、電源電圧からコレクタ電流とZ3の電圧降下を引いたものなので、

VOUT=電源電圧-(Z3×Ic)=5-(25kΩ×100uA)=2.5V


以上の簡単な計算で、各ポイントにおけるDCバイアス電圧の計算ができました。上記では、エミッタ側に抵抗を入れ、エミッタ電流を決定することにより、出力電圧を決定しましたが、実際に設計する場合は、この方法が楽です。任意に回路を設計したい場合は、上記手順を参考に、逆算を行うと、 各抵抗値や電流値を決定することができます。




Contents:今回のポイント

以上ここでは、エミッタ接地回路のバイアス特性について考えましたが、特に計算する上で、トランジスタのVbeを0.6Vや0.7Vとおくことにより、オームの法則を使った簡単な計算で、各電位が求まるようになります。いろいろな回路で計算し、イメージをつかんでおいてください。


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