Fig.2 エミッタ接地回路入出力特性
●領域Bについて考えてみます。
入出力の関係で考えると、入力電圧を更に上げていった場合でも、 出力電圧は、ほぼ0V付近で、一定です。入力電圧は、約4V程度変化した場合でも、
出力電圧は、数mV程度とほとんど変化していません。つまり、この場合、入力信号は、増幅できていないことになります。この領域では、入力電圧を上げて、ベース電流を増加させても、
コレクタ電流は、電源電圧と負荷抵抗で決まった電流(5V÷20kΩ)しか、 流せないため、Ic=Ib×βが成り立ちません。入力電圧を上げていっても、出力電圧は変化しないのは、このためです。この状態をトランジスタが飽和した状態(sat状態)といいます。
以上、領域A、Bの考察から分かることは、 エミッタ接地回路を増幅器として使いたい場合は、 領域Aの状態で使用する必要があるということです。領域Bの状態では、増幅できないからです。特に、領域Aで、出力電圧が電源電圧の1/2になるVin電圧にバイアスし、
Vinを微小に変化させると、出力振幅が大きく取れ、増幅率は上がる方向になります。次は、これについてもう少し見ていきましょう。
Fig.3 ディスクリート回路でよく見るエミッタ接地回路
エミッタ接地回路を増幅器として使う場合、一般的に上記のような構成を用いることがあります。勉強のために、分かりやすいので、ここで取り上げます。
この回路の動作を簡単に説明すると、R1とR3がDCバイアス電圧です。
トランジスタを動く状態にするのが、バイアス設計です。
この電圧が、トランジスタQ1の動作電圧を決定します。
そして、この回路を増幅器として使う場合、このDC電圧に対し、 微小な電圧変化、AC的な電圧変化をVinよりカップリングコンデンサC1を通して入力します。これによって、R1とR3で決まるバイアス点を基準に、入力されたAC電圧が振れ、
先程の考察と同様、出力電圧変化として現れます。これが基本的なエミッタ接地回路の増幅動作です。
では、このR1とR3のDCバイアス電圧をどう決めたらよいか?ということを、 次に考えます。
Fig.4 エミッタ接地回路入出力特性
では、このDCバイアスをどのように決めればよいかを考えます。
増幅器として使用する場合は、どれだけ出力振幅を大きくとれるかということが重要です。出力電圧は、電源電圧の範囲を取るので、簡単に考えると、 出力振幅を最大にするためには、電源電圧の1/2になればよいということです。(厳密には、電源電圧からトランジスタの飽和電圧を引いたものに対して1/2)
この中心電圧が偏ってしまうと、出力信号の上側か下側がクランプされてしまい、 信号が歪みます。
では、出力振幅を最大に取るためのバイアス条件の簡単な見つけ方を紹介します。とはいっても、上記とやっていることは、何ら変わりはありません。
手順1、回路の入出力を明確にする。
手順2、入力に0Vから電源電圧までの電圧をDCスイープで入力する。
手順3、出力電圧が、電源電圧の1/2になっている入力電圧を読み取る。
手順4、その読み取った入力電圧を入力電圧にバイアスする。
以上の手順により、出力信号が最大の振幅になる入力電圧は、見つけられます。この考え方は、トランジスタ増幅器だけでなく、オペアンプなど、 さまざまな増幅器に適用できるので、覚えておいてください。
以上、今回は、エミッタ接地回路の増幅について考えました。再度、エミッタ接地回路の動作を簡単にまとめると、 大きく3つの領域があるということです。使用する目的に応じて、これらの領域を使い分ける必要があります。
VIN | 0~約0.7V以下 | 領域A | 領域B |
動作状態 | オフ | 順方向活性領域 | 飽和領域 |
出力電圧 | 電源電圧 | 電源電圧-⊿Ic×Z | Vce(sat) |
増幅できるか | × | ○ | × |
以上より、増幅させたい場合は、領域Aを使う。スイッチ回路、トランジスタを論理反転回路として使う場合は、オフ状態と領域Bを使う。ということです。
ここでの考え方は、非常に重要ですので、イメージをつかんでおいてください。
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