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Transistor Circuits:エミッタ接地回路の基本3

LSI、半導体回路、集積回路において、現在では、Bi-CMOSプロセスが中心となり、デジタル、アナログ回路が混在した半導体製品や、IC、集積回路が主流になってきていますが、やはり、バイポーラトランジスタ回路を使った高精度アナログ回路など、NPN、PNPトランジスタを使ったバイポーラ回路は、とても重要です。そのため、ここでは、トランジスタ回路の、設計について、基本的な事柄を勉強していきたいと思います。

今回は、エミッタ接地回路の増幅など、基本的な内容についてまとめていきます。










Contents:解説1、 エミッタ接地回路の増幅について

エミッタ接地回路の増幅について考えてみたいと思います。難しいことを考える前に、簡単のため、入出力特性について見ていきましょう。下図が、基本的なエミッタ接地回路です。Vin、ベース端子に電圧を入力し、エミッタは、GNDに接地、 コレクタ側には、負荷R=20kΩをつけています。ベースについている抵抗10kΩは、ベース電流が流れすぎるのを防止する抵抗です。

エミッタ接地の基本形

(a)エミッタ接地回路               

エミッタ接地DCスイープ

(b)入出力電圧特性              
Fig.1 エミッタ接地回路基本特性


Fig.1のエミッタ接地回路のVinに電圧を印加し、出力がどうなるかを見ていきます。Vinを0から電源電圧の5Vまで上げていった結果が、(b)の特性になります。

それでは、これを使って、各領域について考えてみましょう。

●領域Aについて考えてみます。
入出力の関係で考えると、入力電圧の変化が、約0.2Vと小さなVinの変化に対し、 出力電圧は、約5Vまで急峻に下がっています。簡単に考えると、入出力で、約5V÷約0.2Vで約25倍になっていることが分かります。つまり、小さな入力電圧の変化で、出力が大きく変化しており、 入力信号と出力信号の関係について考えると、 出力信号は、入力信号を増幅していると考えることができます。これがポイントです。

この領域Aでは、ベース電流に応じたコレクタ電流の変化、つまり、Ic=Ib×βが成り立ち、 ベース電流の変化で、コレクタ電流が変化し、コレクタ電流と負荷抵抗の電圧降下により、 コレクタ電圧が変化し、電源電圧との差分が出力電圧として出力されます。

例えば、入力電圧の微小変化+⊿Vinと−⊿Vinを考えます。
+⊿Vinでベース電流が+⊿Ib増加する
↓↓
出力電圧の変化分は、+⊿Ib×β×R、 −⊿Vinでベース電流が−⊿Ib増加する
↓↓
出力電圧の変化分は、−⊿Ib×β×R となります。


以上より、入力電圧の微小な変化に対して、出力が大きく変化するため、その入出力の比は、大きくなり、入力信号から見て、出力電圧は、 増幅していると考えることができます。これが増幅の原理です。




Contents:解説2、 エミッタ接地回路の領域Bについて

エミッタ接地DCスイープ
Fig.2 エミッタ接地回路入出力特性

●領域Bについて考えてみます。
入出力の関係で考えると、入力電圧を更に上げていった場合でも、 出力電圧は、ほぼ0V付近で、一定です。入力電圧は、約4V程度変化した場合でも、 出力電圧は、数mV程度とほとんど変化していません。つまり、この場合、入力信号は、増幅できていないことになります。この領域では、入力電圧を上げて、ベース電流を増加させても、 コレクタ電流は、電源電圧と負荷抵抗で決まった電流(5V÷20kΩ)しか、 流せないため、Ic=Ib×βが成り立ちません。入力電圧を上げていっても、出力電圧は変化しないのは、このためです。この状態をトランジスタが飽和した状態(sat状態)といいます。


以上、領域A、Bの考察から分かることは、 エミッタ接地回路を増幅器として使いたい場合は、 領域Aの状態で使用する必要があるということです。領域Bの状態では、増幅できないからです。特に、領域Aで、出力電圧が電源電圧の1/2になるVin電圧にバイアスし、 Vinを微小に変化させると、出力振幅が大きく取れ、増幅率は上がる方向になります。次は、これについてもう少し見ていきましょう。








Contents:解説3、 エミッタ接地回路の入力電圧バイアスポイントについて


よくみかけるエミッタ接地回路

Fig.3 ディスクリート回路でよく見るエミッタ接地回路

エミッタ接地回路を増幅器として使う場合、一般的に上記のような構成を用いることがあります。勉強のために、分かりやすいので、ここで取り上げます。

この回路の動作を簡単に説明すると、R1とR3がDCバイアス電圧です。
トランジスタを動く状態にするのが、バイアス設計です。
この電圧が、トランジスタQ1の動作電圧を決定します。

そして、この回路を増幅器として使う場合、このDC電圧に対し、 微小な電圧変化、AC的な電圧変化をVinよりカップリングコンデンサC1を通して入力します。これによって、R1とR3で決まるバイアス点を基準に、入力されたAC電圧が振れ、 先程の考察と同様、出力電圧変化として現れます。これが基本的なエミッタ接地回路の増幅動作です。


では、このR1とR3のDCバイアス電圧をどう決めたらよいか?ということを、 次に考えます。
        

エミッタ接地DCスイープ

Fig.4 エミッタ接地回路入出力特性


では、このDCバイアスをどのように決めればよいかを考えます。

増幅器として使用する場合は、どれだけ出力振幅を大きくとれるかということが重要です。出力電圧は、電源電圧の範囲を取るので、簡単に考えると、 出力振幅を最大にするためには、電源電圧の1/2になればよいということです。(厳密には、電源電圧からトランジスタの飽和電圧を引いたものに対して1/2) この中心電圧が偏ってしまうと、出力信号の上側か下側がクランプされてしまい、 信号が歪みます。

では、出力振幅を最大に取るためのバイアス条件の簡単な見つけ方を紹介します。とはいっても、上記とやっていることは、何ら変わりはありません。


手順1、回路の入出力を明確にする。
手順2、入力に0Vから電源電圧までの電圧をDCスイープで入力する。
手順3、出力電圧が、電源電圧の1/2になっている入力電圧を読み取る。
手順4、その読み取った入力電圧を入力電圧にバイアスする。


以上の手順により、出力信号が最大の振幅になる入力電圧は、見つけられます。この考え方は、トランジスタ増幅器だけでなく、オペアンプなど、 さまざまな増幅器に適用できるので、覚えておいてください。




Contents:今回のポイント

以上、今回は、エミッタ接地回路の増幅について考えました。再度、エミッタ接地回路の動作を簡単にまとめると、 大きく3つの領域があるということです。使用する目的に応じて、これらの領域を使い分ける必要があります。

VIN 0~約0.7V以下 領域A 領域B
動作状態 オフ 順方向活性領域 飽和領域
出力電圧 電源電圧 電源電圧-⊿Ic×Z Vce(sat)
増幅できるか × ×


以上より、増幅させたい場合は、領域Aを使う。スイッチ回路、トランジスタを論理反転回路として使う場合は、オフ状態と領域Bを使う。ということです。

ここでの考え方は、非常に重要ですので、イメージをつかんでおいてください。

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