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Transistor Circuits:エミッタ接地回路の基本2

LSI、半導体回路、集積回路において、現在では、Bi-CMOSプロセスが中心となり、デジタル、アナログ回路が混在した半導体製品や、IC、集積回路が主流になってきていますが、やはり、バイポーラトランジスタ回路を使った高精度アナログ回路など、NPN、PNPトランジスタを使ったバイポーラ回路は、とても重要です。そのため、ここでは、トランジスタ回路の、設計について、基本的な事柄を勉強していきたいと思います。

今回は、最もよく使われるエミッタ接地回路について、基本的な内容をまとめていきたいと思います。










Contents:解説1、 エミッタ接地回路の入出力特性について

エミッタ接地回路とは、どのような回路でしょうか?

難しいことを考える前に、簡単のため、入出力特性について見ていきましょう。回路の動作を知る上で、入出力特性は、非常に重要です。下図が、基本的なエミッタ接地回路です。VIN、ベース端子に電圧、もしくは電流を入力し、 エミッタは、GNDに接地、コレクタ側には、負荷Zをつけています。(負荷Zは、抵抗、定電流回路などです、一般的に表現するためZとしています。



(a)エミッタ接地回路

エミッタ接地のDCスイープ特性

(b)入出力電圧特性             
Fig.1 エミッタ接地回路基本特性


Fig.1のエミッタ接地回路のVINに電圧を印加し、出力がどうなるかを見ていきます。VINを0から電源電圧まで上げていった結果が、(b)の特性になります。


(1)VIN=0〜約0.6V〜0.7V付近の動作
オフ状態 トランジスタは、Vbe電圧が、約0.6〜0.7Vでオンし、コレクタ電流を流し始めるため、 上図の場合、VINが、0からそのあたりの電圧までは、トランジスタはオフしており、 コレクタ電流が流れません。そのため、負荷Zは、電源電圧にプルアップされた状態となり、 VOUTは、ほぼ電源電圧です。


(2)VIN=約0.6〜0.7V付近から飽和する直前までの動作
オン状態、増幅可能領域 VIN=約0.6〜0.7V付近で、トランジスタは、オンし始め、コレクタ電流を流し始めます。更にVINを上げていくと、コレクタ電流は、次第に増え始め、 VOUTは、Zに掛かる電圧が大きくなるため、以下の式のようになります。

VOUT=電源電圧ー(コレクタ電流×Z)

⇒コレクタ電流が大きくなり、コレクタ電流×Zが大きくなるため、VOUTは、下がっていきます。


(3)VINが十分高い状態から電源電圧レベル
フルオン状態、飽和状態、増幅不可能領域 VINを更に上げていくと、コレクタ電流×Zが大きな値になり、 VOUTが、ほぼGNDレベルの電圧になり、これ以上、電圧が下がらない状態になります。これは、トランジスタが飽和した状態です。(一般的に、飽和した、satしたと呼ぶ人が多いです。)


以上、3つの状態を考えましたが、 入力電圧の大きさにより、上記のような3つの状態をとることが分かります。これらの領域の特徴をうまく利用すると、増幅器、論理反転回路などが実現できます。




Contents:解説2、 エミッタ接地回路の論理反転回路について




(a)エミッタ接地回路             

エミッタ接地のDCスイープ特性

(b)入出力電圧特性             
Fig.2 エミッタ接地回路基本特性


次に、上記状態の(1)と(3)の状態を考えます。
下記の表に、それぞれを簡単にまとめると、

例えば、電源電圧=5Vとします。

VIN 出力電圧
0V付近 VOUT=電源電圧=5V
電源電圧付近=5V VOUT=Vsat(飽和状態)
=ほぼ0V付近



ここから分かることは、VIN=0Vで出力が5V、VIN=5Vで出力が0V付近 つまり、入力信号を反転した信号が得られるということです。欲しい信号を簡単に反転させたい場合に使えます。

以上より、極端に入力電圧が高い、もしくは、低い状態にした場合、 エミッタ接地回路は、反転の論理回路として使うことができます。


<参考> 
ハイ、ローとは ロジック回路など、デジタル回路では、信号を0か1、もしくは、HかLという表現で、話をします。これは、電圧があるものをHigh(ハイ)、無いものをLow(ロー)、 という状態で考えたもので、例えば上記の場合、5Vをある=H、0V付近をない=Lと 考えることができます。基本的には、ある基準となる電圧より、高いか、低いかで、 あるないを判断します。次段の回路の切り替わり電圧に対して、高いか、 低いかで判断することが多いです。









Contents:解説3、 エミッタ接地回路の入出力特性の確認

上記回路を今度は、シミュレーションを使ってみていきましょう。

エミッタ接地の基本形

(a)エミッタ接地回路             

エミッタ接地のDCスイープ特性

(b)入出力電圧特性             
Fig.3 エミッタ接地回路基本特性シミュレーション

各回路の要素部品の役割を以下に示します。

部品 役割
V1 入力電圧
V3 回路の電源電圧(5V)
R1 ベース電流制限用抵抗(10kΩ)
⇒トランジスタのベース端子に直接電源を与えた場合、過大なベース電流が流れる恐れがあるため、それを制限します。この回路の場合ベース端子に5V印加した時、

5v(入力電圧)-約0.7v(Vbe)
÷10kΩ(制限抵抗)=430uAに制限できます。

R2 トランジスタの負荷抵抗(20kΩ)
⇒コレクタ電流を
出力電圧の変化に変換する抵抗です。



この回路でVinの電源、V1を0Vから5Vまでスイープしていった時の出力電圧を、確認してみましょう。Fig.3(b)にSim結果を示します。

エミッタ接地の基本形
(a)エミッタ接地回路             

エミッタ接地のDCスイープ特性

(b)入出力電圧特性             
Fig.3 エミッタ接地回路基本特性シミュレーション


1)VINの低いところのVout電圧は、抵抗でプルアップされているだけなので、ほぼ電源電圧と等しくなっています。

2)入力電圧VINが約0.6V付近からVoutは、5Vからほぼ0V付近まで一気に低下していますが、これは、コレクタ電流が流れ始め、Vinの上昇とともに、コレクタ電流が増えていくからです。

例えば、今回の場合、負荷抵抗R2=20kΩなので
5v(電源電圧:V3) ÷20kΩ(R2)=250uAとなります。
コレクタ電流が仮に250μA流れただけでVout電圧はほぼ0V付近まで低下します。

詳細は、別のページで説明しますが、トランジスタの飽和電圧の特性により0Vにはならず、 使用するデバイス素子の特性により決まるVce(sat)電圧になります。(Vce(sat)とはコレクタ・エミッタ間電圧のsaturation(飽和)の時の電圧を示します。) 以上よりVINが約0.7V付近より高い領域では、 Vout電圧はほぼGNDレベルになっています。




Contents:今回のポイント

以上、ここでは、エミッタ接地回路のDC特性を示しながら動作を見てきました。
この特性が一番基本で、一番重要な特性ですので、イメージをつかんでおいてください。

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