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OSC Circuits:三角波発振回路の基礎

アナログ回路でよく用いられる回路の一つに三角波発振回路があります。
今回はこの三角波発振回路を出来るだけシンプルな形で作ってみたいと思います。










Contents:解説1、 三角波発振回路の基本構成

基本的な構成から考えていきたいと思います。最終的な目標波形は以下の波形になります。



Fig.1 目標となる三角波波形  


次にこれをどうやって実現するかを考えていきます。電圧波形が一定の傾きで上がったり、下がったりしていくので、それに使えるの回路の特性は何かと考えると、 一番真っ先に思いつくのは、コンデンサに電流を充電したり放電したりする動作です。従って、今回はこのコンデンサに電流を充放電する方式で考えてみましょう。


では、どうやってコンデンサに電流を充放電するのかを考えます。簡単に思いつくのは、充電電流と放電電流をスイッチか何かで切り替えてやれば充放電動作出来るのではと思いつきます。 以上より、充電と放電はコンデンサと電流、スイッチで三角波が出来そうですが、この三角波のトップとボトムの電圧をどうやって制御すればよいのでしょうか? まずは、コンデンサを充電し、三角波の電圧がある基準に達した時、放電し、 ある基準に達した時充電するような比較動作が必要になりそうです。


以上の構成を図に表すと以下のようになります。




Fig.2 ブロック構想


では、実際に回路を構成していきます。まずは、コンデンサの電圧を検出し、ある設定になった時に切り替え信号を出力する回路を考えます。一番簡単なのは、コンパレータを利用することです。まじめに考えるとコンパレータで構成する場合、 上限の電圧設定と下限の電圧設定を2種類のコンパレータで比較しその制御信号をロジックで制御する必要があります。従って回路規模が大きくなってしまいます。


もっと簡単な方法はないかと考えます。どんな回路を設計する時もそうですが、特性の許される限り回路規模が小さい方がよいに決まっています。従って、違う方法を考えます。コンパレータを用いて2種類の基準電圧になる時に、それが分かる制御信号を出力出来ればよいので、これってもしかして、2つの電圧で切り替わるヒステリシス特性を持つ回路であればよいのではと思いつきます。


コンパレータで上記の動作を行う場合も、結局はヒステリシスコンパレータにしているだけなので、 もっと簡単なヒステリシスコンパレータはないかと考えます。ここで思いつく最もシンプルで簡単なヒステリシスコンパレータを考えると、MOSインバータを用いたヒステリシス付きインバータ回路が思いつきました。

今回の回路構成は出来るだけ簡単に実現することで、特性は追い求めないので、 このヒステリシス付きインバータ回路を使ってみます。素子ばらつきは大きいですが、数個のMOSで構成出来るので、 今回の目的にぴったりです。




Contents:解説2、 三角波発振回路をどのように実現するか?

以下にヒステリシス付きインバータ回路の構成例を示します。実際様々な形式がありますが、 出来るだけ簡単な構成にしたいので以下のFig.3の形式を選んでみました。



Fig.3  ヒステリシス付きインバータ

基本的な動作としては、入力電圧がHになる時は、付加しているPchMOSがオフしており 、初段のPch、Nchインバータの切り替わり電圧で出力は切り替わり、 入力電圧がLになる時は、付加しているMOSがオンするので、初段のインバータの切り替わり電圧が変化する仕組みです。いたって簡単だと思います。


このヒステリシス付きインバータはPchMOSとNchMOSのW/Lの比率を変えることにより、 切り替わり電圧は設計出来るので、切り替わりH電圧と切り替わりL電圧をPchMOSとNchMOSの比率により任意に設定出来ます。この設計についてはまた、別の章で紹介したいと思います。

今回は切り替わりH電圧を約3.5V、切り替わりL電圧を約2.5V程度になるようにMOSの比率を設定しました。



Fig.3  ヒステリシス付きインバータ



(a)立ち上がり時(約3.4V)


(b)立ち下り時(約2.55V)
Fig.4 ヒステリシス付きインバータの切り替わり特性のシミュレーション結果  


この回路を用いることにより、コンデンサの電圧が約3.4V、約2.55Vになった時 切り替わり信号を出力してくれる役割が出来そうです。



次に充放電電流回路とスイッチについて考えます。最も簡単に電流を供給できる回路はカレントミラーを利用することです。このカレントミラーをスイッチでオンするかオフするかを決めてやれば簡単に充放電回路が作れます。
以下のFig.5に回路例をあげてみます。


Fig.5 充放電回路

基本動作としては、コンデンサへの充電時はPchMOSのカレントミラーから電流を供給し、 放電の時は、下のNchMOSカレントミラーから供給します。ここで下側に2個のNchMOSを付けているのは上から常にPchMOSのカレントミラーの電流が流れてくるからです。充電と放電を同じにする為に充電時は引き算をします。従って、充電:放電=1:1になります。ここで下側のNchMOSカレントミラーの左端のMOSはスイッチです。このスイッチがオンになればNchMOSカレントミラーはオフしますので、 充電だけの動作になり、MOSスイッチがオフすると充電するスイッチです。今回は特性は求めていないので、これだけシンプルな回路で充放電回路が完成しました。



以上の個別回路検討結果より、回路を統合すると以下の回路になります。

Fig.6  シンプルな三角波生成回路


Fig.6とFig.2を比較すると出来上がった回路が目標構成を満たしているか分かりやすいと思います。




Fig.2 ブロック構想


ただし、Fig.6の回路は起動時の安定化の為にスタートアップ回路を設けています。
つまり、始めコンデンサの電圧を0Vから始まるようにスイッチでコンデンサの電圧を0Vに落としています。つまり、上記Fig.6でV1と書かれている電圧にスタート電圧を入力することにより三角波は発振をはじめます。


全体の動作は、スタート電圧が入力されそれからコンデンサの充電がはじまります。コンデンサの電圧がヒステリシスインバータの切り替わりH電圧に達すると充放電回路のスイッチにより今度は放電に切り替わります。その後、コンデンサの電圧がヒステリシスインバータの切り替わりL電圧に達すると今度は充電にという風に、充放電動作を繰り返します。


Fig.7 作った三角波発振回路のシミュレーション結果 F


ig.7の結果より、ヒステリシス付きインバータの切り替わり電圧である約2.55Vから約3.4Vで 三角波が発生出来ており設計目標を達成しました。








Contents:解説3、 三角波発振回路の発振周波数計算

次にこの回路の発振周波数を考えてみます。

CV=itの式より設計出来ます。

例えば充電電流をIj、放電電流をIh、切り替わりH電圧をVh、切り替わりL電圧をVlとした時 CV=itより Trise=CV/i=C(Vh-Vl)/Ij Tfall=CV/i=C(Vh-Vl)/Ih 以上より

f=1/(Trise+Tfall) となります。

以上の検討過程より、シンプルな形の三角波発振回路が出来ました。現実問題、上記回路はシンプルですが、 ばらつきや温度特性に対してはよくないので使いにくいかもしれませんが、 出来るだけシンプルな形で目標となる波形からどういう機能が必要かを考え、実際に回路を設計してみました。これが回路設計の基本です。上記回路は三角波発振回路の基本コンポーネントになるので、 特性を改善したい場合は、さまざまな工夫が出来ると思います。各自考えてみてください。






Contents:今回のポイント

今回は、できるだけ簡単な形で三角波発振回路を作ってみましたが、実際に、どういう波形が欲しいかを考え、それにはどういう機能が必要かをブロック化し、最終的にそのコンポーネントを考えるとさまざまな回路が設計できます。そのため、さまざまな回路形式や特徴を知っている方が有利になります。

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